翻刻
「右帖」
云に着にけり問屋に上り僧をまねき
源蔵が五七日を営み長作が代りの人を
雇はばやと人々を頼みければ幸なる
かな近郡に名を得たる角力取りに金
槌長太と云て強力の若者参らんと
云を雇い舟中都合弐拾人船の道具
も夫々に修利を替へ早秋風を免んと
ぞ見合けり斯而日数を過る内空の
「左帖」
気色も折合ければ明日の出船を待
居たり然るに十月十四日に夜の時更は
覚へね共百人一首に見覚ある式子
内親王の絵を見る如き女郎の十二
一重あてやかに青地の錦の凢帳を加
らげ■(とう)の間の神前ゟ出給ひてちんは
小渕に帰ると岡の方へと飛去り給ふ
いかに四方に薫じて夢見たり孫七