翻刻
「右帖」
不思儀のおもいをなして我れ今とし
拾九才 整(ナマジイ)なる事云出して嘲哢(ケンクワ)さ
れんも恥敷と口外に出さざりき扨て
箱立ゟ江戸え回(メグル)に船中凡三百余里
能々日和も折合けれは十五日の朝六つ時
岡路二里計りの所成る小渕浦に入る
舟は東に当りて金花山のきわをと
ふりて入る湊也金花山回り五里計り
「左帖」
にして岡ゟは三里計りの嶋成水晶
石あり金銀の嶋といへり船ゟ見れば
金銀のいさごを敷き参銭磯部の
岩間に埋りて美麗を尽せし御
宮也斯而十月十九日は夜の内に日和を
見合追風なれば朝七つ時伯耆浦
を出帆して奥州常州の境なる塩
屋の浦といへる迠五拾里余りも走りけり