翻刻
「右帖」
奉行と覚敷人此家ゟ出て車に乗
家来二人 連(つ)れたり白馬二疋にて此車を
引かせ鞭打て町の内凡三里計も行て
黒金(くろかね)の大門有り奉行も爰にて車
を下る此人には傘を指しかざし其
跡に付いて我も門内に入りけるに右左に
其長八尺計り成る黒赤の大牛二疋
繋きたり是誠の牛やらんとよく〳〵
「左帖」
見れば焼物の牛也広庭は惣敷き
瓦にて爰も又身軽の装束 仕(し)たる
人馬に乗り鉄砲を携へ四騎並
居たり其内を通りて又一重の門を
入り玄関と覚敷所ゟ上りて広間に
行き見れば大将の如き人二人 床机(しようぎ)の
如くなる物に腰打掛け居たりける我を
つれ行きし人何とやら不別(はからざる)事(こと)を