翻刻
「右帖」
まへに渡して跡は役人ゟ錠をおろし
水を猥に遣ふ事を制す菜(やさい)は魚
の干物壱つ与へ銘々生(な)まにて喰(しよく)す我れ
には是を焼いて与へけり酒も我には
二日にふらすこ壱ツ■渡しけり酒も
銘々 覚語(かくご)して折々出して呑にけり
此水主の内にも渡々日本へ来り日本の
詞を能く遣ひ覚し者有て物毎に
「左帖」
分り安し此船に牛拾五疋豕(ふた)羊(ひつし)鶏(けい)
等も積み置けり牛は阿蘭陀国にて
は薬と成る其高直成る迚語りける
船中にては一度牛を解きし事有り
料理にせんと極し牛は七日以前ゟ黒(くろ)胡(ご)
麻(ま)を食けり扨其 日(ひ)に当りければ牛の
四足を縅(からげ)て床を出し其上に伏させ
釼を以て吭(のとぶえ)に掛らざる様に指し通し