翻刻
「右帖」
ければ血流るゝ事夥ししたに大鉢を
置て血を受るに凡八升計り流てやみ
ぬ一時計りの内にして牛の苦む事目を
当てられず其後吭(のど)を指切り皮(かは)を刷(は)ぎ
解きはなし水主中にも半斤宛掛け
渡しければ祝事限りなし下々は是(これ)
を皆 生(な)まにて喰す扨此船に出帆して
昼夜三日乗りてグレバンと云島国有り
「左帖」
此所に船を掛け二艘待ち揃へて上八人
右の船に乗り移りて酒肉を持ちて
饗応(きよをう)す此船にも上八人なりければ相(そう)
談して是ゟ先々日本迠の海上同船
し萬事を云合せ一ツ心にて乗り渡す
べしとの誓約也上八人常の居所は
艫(とも)辺の方 櫓(やぐら)と見へて釣り殿也浪
荒く風にゆられて船は片向共釣り