翻刻
「右帖」
出来 適(たま)々是迄身を遁(のが)れ届もやらず
命を落すかと生きた心地ぞなかりける
此は夕暮に近ければ同国の船とや
思けん頓而【やがて】黒船は走り越けり物こそ
邪(あく)魔(ま)は払いしと皆々悦ぶ船寄に
又蘇生(よみかえり)し心地せり此船に出合候得は
海賊せらるとかた語りけり有る日水主
壱人 檣(ほばしら)に上り帆並を仕かへんとして
「左帖」
桁取ばつし櫓(やぐら)の上に落かゝりうん
ともいわず死にけり役人に言上して
其侭死 骸(がい)を海中に打込けり其頃
船中に病に痛み寝たる者三人有り
又壱人の者見へざる由詮儀仕ければ
是又煩ふて引込し由役人に不_レ届
自由の至と引出し裸(はだか)になしうつ
ぶしにししゆろ綱のちやんぬり仕たる