翻刻
「右帖」
時に又風荒くなり空もいかめしく
海の西もたゞならねば船中相談して
本の所に舟を戻し日和を待たんと
云けるに船頭十右衛門は十八歳の若者也兎
やかく云へき子細もなくて居たり
しが親父分の仁兵衛申けるは此風後は
東風に直し次第に和らき候間碇を
入て此所に待つへしと見通す計に申けり
「左帖」
梶取の新七心得難くや思ひけん諸国
の廻船は集りいて皆日和を見合ス也
いつれ共相談すべし迚隣のふねに
行て此風如何や相成へしと掛合けれ
ば其船ゟ申様何れ共分ちかたく候
若又夜に入つて風悪敷成り候得は又
小渕に帰るへく候間火を二つ立らる
べし又日和折合て沖に出給はば相互に