翻刻
【右丁】
ひかへて時をうつさる長政参て此よしを聞いかてさる
事や候へきと 諫あらそひ申せしによつて関白の疑ひ
立所に散して国府の城に入給ひぬ北条亡ひしのち
奥の地こと〳〵くたいらきて長政等検地の事を奉行し
奥にて 賊徒起りし時 関白の御使承りはせ向ひて
退治すそのゝち甲斐国を給て移る《割書:廿一万|七千石》関白天下の黄
金を改め造らせられしに至て長政か家臣此黄金を
偽て造り出す事顕はるゝに及ひ長政其坐にかゝつて
すてに罪科に処せらるへきに極まる徳川殿不便の事に
思召忍ひて彼家にいらせ給ひ事の由をよく尋きはめ
【左丁】
られ長政罪なきやうを執し給ひしかはその咎をゆるさる
此度首つかれし事偏に 徳川殿の御恩による所也と悦事
あさからす文禄の初朝鮮の事起り同二年六月長政
彼国に渡る石田増田等と相議し諸軍勢を率して
晋州の城を攻落すことし冬太閤朝鮮の軍はる〳〵と
かしぬ事をいかつて徳川殿を初て宗徒の大名を名古屋の
陣にあつめ朝鮮の軍今のやうならんにはいつ事定まるへし
とも覚へす今は秀吉みつからむかわんと思ふ三十万の
勢を三手におしわけ利家前田 氏郷蒲生に大将させ
三道より向ひ朝鮮をうちやふりまつすくに大明に