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うどんとすこ六は《振り仮名:女|■んな》めきそば切(きり)と碁は男(おとこ)めきたる
ものなりと人いえりかりにも女(をんな)ににあわぬけい之
をならふべからす万(よろつ)の事 似(に)あふと似あわぬ事あるもの也
㊄ 女ことはつかひの事《割書:付たり|》《振り仮名:大和詞|■まとことは》
もろこし孟子(もうし)といふ賢人(けんじん)の御 母(はゝ)かしこくまし〳〵て孟子(もうし)いと
けなきとき三たひとなりをかへ給ふはしめは商人(あきひと)のとなりに
宿(やと)かり給へば孟子(もうじ)うりかいのまねをのみし給ふ次(つき)に寺(てら)のほと
りにすみ給へは死人(しにん)をほうむるまねをし給ふ三たびめに《振り仮名:学|■く》
文者(もんしや)のとなりに宿(やと)かへ給へば孟子(もうし)あさゆふかくもんしてつゐに
賢人(けんに)となり給ふされば孟子(もうし)のことくなる賢人(けんに)さへなるゝ事に心
うつるなれはいわんやつねの女(をんな)なとはかりにも《振り仮名:男|おと■》ちかくそたつ
べからず《振り仮名:男|おと■》の中にそたちたる女(おんな)は心(こゝろ)も男(をとこ)らしく詞(ことは)も男(おとこ)に
うつるものなり男(おとこ)の詞(ことは)づかひを女(をんな)のいひたるは耳(みゝ)にあたりて
聞(きゝ)にくきものなり女(をんな)のことばはかた言(こと)まじりにやはらかなるこ
そよけれ文字(もじ)にあたりこばしなとしていふ事かへす〴〵あしき
事なりよろづの詞(ことは)におともじとをつけくやはらかなるへし
あらましこゝに書(かき)つけてしらしむるものなり
内(うち)の者(もの)又は下々(した〳〵)といふべきを 家来(けらい)又は下人(けにん)といふはあしゝ
おく様御 内(うち)さまなどいふべきを 内義(ないき)内室(ないしつ)などいふはかたし
との又は御(こ)ていなどと云へきを 亭主(ていしゆ)の男(おとこ)のと云はさもしく
現代語訳
うどんと双六は女らしく、蕎麦切りと碁は男らしいものだと人は言う。仮にも女性に似合わない芸事を習うべきではない。万事において、似合うことと似合わないことがあるものである。
◉女性の言葉遣いについて(付録:大和言葉)
中国の孟子という賢人の母は賢明で立派な方で、孟子がまだ幼い時に三度住まいを変えられた。最初は商人の隣に住まわれたので、孟子は売り買いの真似ばかりをされた。次に寺の近くに住まわれると、死人を埋葬する真似をされた。三度目に学者の隣に住まいを変えられると、孟子は朝夕学問をして、ついに賢人となられた。それゆえ孟子ほどの賢人でさえ、周囲の環境に心が移るのであるから、ましてや普通の女性などは決して男性の近くで育つべきではない。男性の中で育った女性は、心も男らしく、言葉も男性に似るものである。男性の言葉遣いを女性が使うのは、耳障りで聞きにくいものである。女性の言葉は片言交じりで柔らかなのが良い。文字にあたりこばしなどと言うのは、返す返すも悪いことである。あらゆる言葉に「お」という文字を付けて柔らかくするべきである。
概ねここに書き記して知らせるものである。
「内の者」または「下々」と言うべきを「家来」または「下人」と言うのは悪い
「奥様」「御内様」などと言うべきを「内儀」「内室」などと言うのは堅い
「殿」または「御亭」などと言うべきを「亭主の男の」と言うのは卑しく
英語訳
People say that udon and sugoroku are feminine, while soba-cutting and go are masculine. Women should never learn arts that do not suit them, even temporarily. In all things, there are matters that are suitable and those that are not.
◉ On Women's Speech (Supplement: Japanese Words)
The mother of the Chinese sage Mencius was wise and admirable. When Mencius was still very young, she moved their residence three times. At first, they lived next to merchants, so Mencius would only imitate buying and selling. Next, when they lived near a temple, he imitated burying the dead. The third time, when she moved their home next to a scholar, Mencius studied morning and evening and eventually became a sage. Therefore, even a sage like Mencius was influenced by his surroundings, so ordinary women should never be raised in close proximity to men. Women who grow up among men develop masculine hearts and speech patterns similar to men. When women use masculine speech, it is jarring and unpleasant to hear. Women's speech should be mixed with gentle expressions and soft. Using harsh, direct language is extremely bad. All words should be softened by adding the honorific prefix "o."
Generally, these matters are recorded here for instruction.
Saying "retainers" or "servants" when one should say "household members" or "those below" is bad.
Saying "naigi" (wife) or "naishitsu" (inner chamber) when one should say "oku-sama" (honored lady) or "go-uchi-sama" (honored household lady) is too stiff.
Saying "the husband's man" when one should say "tono" (lord) or "go-tei" (honored master) is base.