翻刻
所もちがへば心ばへ風俗(ふうそく)までもちがひありされば賢(かしこき)より賢
にうつしてわれより上ざまの人の心ばへ風俗を見ならひ給
ふべしかりにも下(しも)ざまの心ばへ風俗にならふべからず風俗と
はたちふるまひの事なりけつかうなる衣装(いしやう)を着給へといふ
にはあらず衣装(いしやう)もそれ〳〵のくらゐに過ぬをよしとす五百
石のおく様は千石のおく様にまがひ三 貫匁(くわんめ)か五貫目の望姓(もとで)
の町人 夫(とゝ)は秤(はかり)を腰(こし)にさしわらぢがけにてあきなひするに
その女房(によはう)は百貫目の御内義にもまかふほどの衣装つき
今の世の風俗みなかくのごとしそれ〳〵の《振り仮名:位|■■》わがみのほど
をしらぬゆへなり身のほどをしらぬにはあらねど女はすへて
心(こゝろ)高(たか)ぶりやすく全上(せんしやう)ふかきゆへなり女(をんな)は物(もの)こと出すぎすゑ
んりよふかきやうにたしなみ給ふべし都(みやこ)の風俗(ふうぞく)は余国(よこく)に
まさりたりと見へて国々(くに〳〵)在々(ざい〳〵)つがるそとのはままて名に
おふ花(はな)のみやこ風(ふう)をうつす事になりたれども都(みやこ)のふう
ぞく上人(しやうにん)はかくべつ中(ちう)より下(した)は衣装(いしやう)のそめやうとりなり帯(おび)の
むすびやうまで時行風(はやりふう)といふはみな哥舞(かぶ)きの女(をんな)かた風(ふう)をま
なひて極(きはめ)て破手(はて)なりよき人(ひと)の艶(えん)にやさしき風(ふう)にあらす
此(この)風(ふう)は下女(げぢよ)はしたの風(ふう)にてよき人はこれをあざけりあさ
みてかりにもまねばすこれをなへての都風(みやこふ)と他国(たこく)におも
えるは花(はな)のみやこのはぢとやいわまし都風(みやこふう)といふは御所(ごしよ)の