翻刻
【右丁】
蝦夷土人住居の村々あり此イシカリ河は鮭の塩引を
出す所にて秋にいたれは毎年数十艘の日本の商
船渡海して此河の内に船かゝりして滞留するに
風波の懸もなし縦数百艘の大船幅湊するとも
狭しとせす此河時として標根其まゝ具たる大
木流れ出る事数をしらす人皆是を視て河上の
地中に大雨降たるへしといえり是源の河岸あふれて
出るものかといへり地中曠けれは此流樹の出所を知るへ
なし河尻の海近き所は潮汐の干満ありて河幅凡
五六百間あり又東蝦夷地のトカチの河は浜辺より
【左丁】
一里程の河上にて二筋に別れて海に流れ入る二筋にて
凡六七町計り有海の落口に瀬ありて大船河内に入
る事能はす又東蝦夷地にホロヘツの場所の内に
ノボルヘツといふ小河あり此河上を尋ぬるに四五里程の
山奥に硫黄山ありて常に焼て消る事なく信州浅
間のことく依て其辺は一円に温泉湧出て谷々より
落集り一河となりて此ノボルベツに流れ来る也此辺に
此河の水色は白粉に紺青とを掻立たるかことし俗に
いふ染色のせいたい鼠の色#1になり小河なれとも水勢
急流ゆへ常に濁りて一日も水底見ゆる事なし