アイヌ関連資料

コレクション: 蝦夷草紙

蝦夷草紙(龍谷大学図書館) - 翻刻

蝦夷草紙(龍谷大学図書館) - ページ 29

ページ: 29

翻刻

【右丁】   舅の久々逢されは懐敷珍しとて対面の酒宴あり   余も其聟のイコトイと倶にマウラカアイニか宅え行   けるに亭主マウラカは上座の右の隅に居り聟の賓   客イコトイは下座の左の隅に居る於是相互に恐々   として言語を発せす暫く有て家来の長夷進み   出て聟のイコトイに挨拶いひけれともチヤアラケと   て蝦夷の切口上には請答をいふ此時は平日の言葉   とは大に違ひ予か耳へは一向にしれすたゝ能視て   ゐるのみ也夫より相互に席を進みより舅と聟と   額と額とを突合せ左右の手にて渠か両耳をは 【左丁】   某かおさへ某か両耳をは渠か押へて相互に相生に   無言に感涙涕泣する事良暫くなり感涙涕泣   やみて坐を退き相互に再拝してチヤアラフにて時   宜を演説する也其後尋れは親類親族に中絶して   久しふりの対面には此礼儀有事也といへり夫より   酒宴はしまり蝦夷の土人大勢群集せし事也其   うちに赤人三人有予と三ケ国の人物寄合にて打解   たる酒興によりて蝦夷歌を諷ひ蝦夷踊り又赤人   は赤人歌に赤人をとりをしたり予も日本の戯歌   を諷ふて相互に遠慮斟酌もなく再ひ逢れぬ坐