翻刻
【右丁】
処に過て騒敷事も有なり扨器物の多きを雅也
とす日本行器耳盥湯桶柄酌盃台の類都而金
蒔絵の付たるを悦ふなり皆是酒宴の酒器に用
る道具なり時に松前の者に留川長右衛門といふ通詞
松前所在島の内シラヌカといふ漁猟のかせき場所
を支配して此シラヌカに住居せりある時其所の
乙名来りてみやうは近きは器物に何も珍ら敷器物は
送りさる旨をいひけり通詞長右衛門是に泥むて何そ
あたへたくおもひ仍て松前表へ其旨をいひ送り彼場所
請負の主人彼これと思ひまはして金めつきの金物附の
【左丁】
挟箱#1を遣しけり此箱の内は金光紙にてはりたるゆへ
内も外も金光りに輝きけり長右衛門此箱至【到?】来しけれ
は急き其筥を彼乙名にいひ遣しけるに乙名コタカ
聞て急き長右衛門か居る運上小屋に来る長右衛門
コタカに対面して曰此度松前表より良器至来
せり依て呼に進せたりといふコタカその器を見て大に
悦ひ天地開けてより如此の珍器珍物はよもあらしと
思ひ勇み進んて交易せり此代物に干魚数品々の
価を出し其挟箱を請取得たり賢こしと私宅
に持帰けり私宅におゐて彼挟箱をつく〳〵と見て