アイヌ関連資料

コレクション: 蝦夷草紙

蝦夷草紙(龍谷大学図書館) - 翻刻

蝦夷草紙(龍谷大学図書館) - ページ 32

ページ: 32

翻刻

【右丁】   思ふやう唯今迄器も多しといへとも誠に類の無器   物也とて大に悦ひ珍器珍宝を求得たる高慢の意   はし是を弘めんと思ひ俄に濁酒を造て近所村近郷   の乙名の長夷等を扣きうけ彼器物弘めの酒宴を   初めけり時に彼挟箱を持出して濁酒を十分と盛り   座敷の中央に閣きたり来客の乙名蝦夷とも此器   物見て肝に銘し古今に比類なき珍器也と甚た   賞翫してほめそやしけり酒宴も既に終ん比に彼挟   箱も明けれは内を張たる金光紙は皆兀けにけり   是を見て一坐の長夷をはじめ大勢大に興をさまし 【左丁】   気毒かりけれは亭主のコタカ大に怒りて曰我此器物   を求めし時は莫太の代呂物と交易せしに如斯の   紛れ物を以て我産物をうはひ取たるならんとて憤り   て頓て運上小屋に行通詞長右衛門に進てコタカいわ   く彼珍器は全く紛敷物ならんか濁酒を盛たれは内   は尽て兀けたりといふ爰に長右衛門これを聞て大に困   り全以紛れ物には非す彼器物は衣類を入る箱にて   水を入れる箱にては無事を能々詫ひけれは漸々不有   せしとなり代呂物莫太に出して交易せし珍器の   思ひ入の違ひたるより唯一途に誑らかされ歎かれたる