アイヌ関連資料

コレクション: 蝦夷草紙

蝦夷草紙(龍谷大学図書館) - 翻刻

蝦夷草紙(龍谷大学図書館) - ページ 34

ページ: 34

翻刻

【右丁】   捨て悉く料理荷物に作りてウタシに負せ扨又彼   跡に予赤熊三疋居たるを生捕て主従大勢深山   より浜辺に降りける時に其体は彼親熊の肉と   皮とを分けて背負ひ生捕の子熊三疋を率つれ   蝦夷の例にて野宿小屋の遥に向より声を張り   コゴキセとて哺々と〻といひなから呼ひ悦ひ勇んて帰り   来るなりコゴキセの声高く聞へしかは蝦夷女にも迎   に出携物の熊を見て野宿の仮小屋に傍に窓をひ   らき其赤熊の首皮を尊信して此窓より入て上   座に安置して後に我耳環をはづして彼赤熊の 【左丁】   耳にかけ太刀を首皮の真向に飾りていかにも恭敬   尊敬して崇ふる蝦夷土地の定例なり其故は熊は   霊獣なれば魂魄化して蝦夷土人となる故也といへり   鹿肉魚肉等の供物をして高貴の人に対するか如   くにて恭敷再拝して其後其熊の肉を又供物に   する也其ゆへを尋るに魂魄は残る物皮肉は仮の物   なれは心と骸とは別なる物なりといへり此定例済て   眷属の蝦夷人とも打集り肉を煮たり焼たり生   にても喰ふ熊の肉を食するには礼式あり鹿肉狐   肉等を喰ふとは大に別也といへり此振舞終りて