翻刻
一万次郎アメリカに在し時フイツヘル殊の外寵愛し学問等
もよく出来候に随ひ往々は家相続の心持にて己が姪を
縁組致させ居たる由万次郎義もフイツヘル又妻とすべき
女甚不便に存候へ共不得止帰国の心なりしかはハフ国出航の
節細々と文認め頼み置し由今に恋々の情は尽ぬ体也
一ハフ国より携来る道具又琉球国にて貰ひたる道具等
長持三つ尤小なる長持也
世界をわる鏡 世界の図七枚《割書:四枚は長崎|にて御取上》アメリカにてほり
たる金書物数十巻日記アメリカにての書翰数通地理道
具品々鉄炮三丁衣類右の内にて長崎にて万次郎御渡
之品蒲団枕 衣類品々 世界の図三枚鍋釜類
アヘン煙草少々コンハツこの外尚有とも大略右之通
一ハフアメリカとも味噌醤油の類無し塩にて味を付る
一琉球より薩州の御差配にて薩州へ渡り婦夫より長崎
へ来りて月代抔し日本の姿となる
一長崎にて揚屋入になり揚屋入と申せとも寛なる事にて
日々浄瑠理語の類も参り此時より次第に日本の語覚
へ申と也
一アメリカ国日本待歌の類あり又道中にて唱類を謡事
其文に同和解すれは
向ふの山坂より恋しと思ふ人かはんりう〳〵来る目には涙を
はさみて
一ハフ国に日本人持渡る太刀あり是を以て首を切る由申
伝へ武勇の国なりと称するよし也
一五人の者に見せたる弐朱と寛永通宝大坂のもの以前流
されこの処字落たるか