翻刻
余国に是を売る或時は氷海に至る此海に入れは舟の
子□に鋸を仕掛氷を割通行す又氷の山海中にあり
この海中の鯨寒気強き故にふくて取易すし
一天/竺(ジク)の中/咬□□(ふりがな)黒坊国へも上陸す大黒坊は赤道直下の
国にて色黒く鍋墨を塗りたるが如き也蘭人の常々乗
するは真の黒坊には非すと云この国食物はカシヲノ/ミ(実)を食す
ヤシヲは日本の□櫚に似たり葉を取足手腰にまとふまた
侍にも一種の裸国あり此国挺女の類あり是もカシヲノミ
を食し人死すれは集りて食すパンアヘン煙子の類を遣て
交易す
一或時諸国を廻りハフ国へ上陸の節寅右衛門等三人に逢ひ帰
国の約をなし再あめりかへ帰る是漂着の節別れてより
六ヶ年振り也この時伝蔵五右衛門はエゾへ来る帰国してい
また湊へ船掛の節なり
一万次郎事右帰国の約をなせしより金をたくはへざれは其
義難調と工夫し南アメリカ国の金山に行金を掘る此地温泉
有て金は自然温泉に湧き堅りたるもの多し
丁度金を取帰家人抔に心の中晦乞して再ひ金山に行と
号しハフ国へ逃れ来り伝蔵等の対会し小船を造りアメリカ
国商船に便を乞乗船して琉球国四十里計沖にて小船
を下し三人取乗り琉球国へ着岸す
一右商船に別るゝ時ハフに残る寅右衛門へも無事に帰国なし
たる由又寅右衛門も何卒帰国いたすへき趣文通す
一寅右衛門も倶に帰国の筈之処如何にしても帰国は難義
との存念にてハフ国に留ると云