翻刻
一其年の霜月ウハフ国に着船す《割書:異人ハウノ字ハブキテ|ハフト云二似タリ》
一雨の日は盃をうつむけたる如き笠を冠リ日和には
トにてあみたる笠を着るこの笠の跡に穴あり夫より
くでに折たる髪を出し垂る也
一髪は日本惣髪の如くなるをくでにうち女の髪は□神
ことくひといへるか如し白粉紅抔は不用也
一上品の人は常に鉄砲を携ふ日本帯刀の如し上下共枝
を突く朱檀黒檀の類にて制す
一ハフ国大サ大体四国位イ七島有て甚繁栄すこの国近
年亜墨利加国より人道を教へて諸国交易の津とす
西洋国より船入津し日本大坂の如き地にして遊女町
なとあり
一伊の鯨船此国に入津しアメリカより居置処タフタチヨ
チト申役人に頼置鯨船ヘは万次郎壱人のせセツセツセと云処へ
着船す是アメリカ国の中船頭の住居する地也
一万次郎の外四人ハタブタチヨチのせ話になりて居たれとも言
語不通かのもの弐朱歩と寛永通宝をいだしこの国なり
やと仕方す四人の者平伏すればやがて日本人と悟りたる様子也
一四人者共タフタチヨチに請渡世せん事を慮?望す依之タ
フタチヨチの世話にて荷物日用抔初むと言
一ハフ国時候日本の九月頃の如し年中羅紗一枚着にて
よろし
一祭の事はアメリカの教にて月の七日〳〵に日本元日の如く家々
戸を閉ち祭をなす是は六日世界成就の救にて其翌の
七日に天神を祭る申也
一食物は田芋唐芋定食也其中に麦は上食也米日諸国にも