翻刻
【右丁頭書】
但し品おとれりごま醬油のひ
たし物みそあへなどにもするなり
ちひさき時からし漬にして風味よし
大なるをへぎて三ばい酢につけた
るもよしへぎて少しほしひたし物に
するも風味あり唐がらしを入べし
○胡蘿蔔(にんじん) かす汁に入てよし
にしめて用るは通例(つうれい)也せんに切て
水菜(みづな)と煮たるもよしふと煮(に)とて
酒(さか)しほにてゆる〳〵と煮たるは客(きやく)
用(よう)にもすべし白あへふろ吹にもす
べし上方(かみがた)にてはいやしき物のやうに
すれども尤(もつとも)上品(じやうひん)なるもの也せんに
切て鳥獣(とりけもの)の肉(み)にあしらへば悪臭(あしきか)を
さけて甚よしざつとゆでゝひたし
物にしたるもよし
○牛蒡(ごばう) けづりて川魚(かはいを)の汁に入て
【左丁頭書】
あしき臭(か)をさるせんにて油(あぶら)にいため
からりと煮ていりけしをふりかけ
たるもよしふとなりに切て酒(さけ)にて
煮つめたるは上品なり胡麻煮(ごまに)にも
すべし山椒(さんしやう)に出合よろしき物也
○くわゐ たゝきぐわゐとてひし
きひらめて用ゆおもしろき物なり
雷(かみなり)どうふの具(ぐ)或(あるひ)は茶(ちや)わんむしなど
に入てよし煮ごみへも入べし少
し味(あぢ)をつけて糸切(いときり)にしたるはもり
合せにつかふべし風味(ふうみ)あるものにて
いやしからす
○葱(ねぶか) ばん菜(さい)には第一の物なり
川魚(かはいを)の汁/鳥獣(とりけもの)の肉(み)などになくて
かなはぬ物なりつみ切て吸口(すひくち)にし
うどんそばの具(ぐ)に用ひなど重宝(ちやうほう)な
るもの也なんば煮/酢(す)あへなどにも
【右丁本文】
おきて火(ひ)を指(さす)べし火気(くわき)と共(とも)にちりうせて再(ふたゝ)び集(あつま)
らず又うなぎを焼(やき)てその煙(けふり)をあつれば皆(みな)死(し)する也
煙草(たばこ)の茎(くき)をせんじて澆(そゝ)ぐもよし蠐螬(いもむし)は蝶(てふ)来り
てうみ付る卵(たまご)より生ず早(はや)く取(とり)すてゝよしすべて
毛虫(けむし)の類(るい)の卵(たまご)をとるには油(あぶら)をひたしたる紙(かみ)にて
【挿絵】
【左丁本文】
ぬぐひ去(さる)べし毛虫(けむし)には種々(しゆ〴〵)あるものなるが皆(みな)
大に害(がい)をなす物なればよく〳〵心をつけて早(はや)く
取(とり)すつべし木の根(ね)もと板屏(いたべい)壁(かべ)垣(かき)の竹(たけ)などに
長(なが)く綿(わた)のごとくなる物あるも毛虫(けむし)の卵(たまご)なり早く
とり棄(すつ)べし菊虎(きくすひ)といふものありて螢(ほたる)に似(に)たり
菊蓬(きくよもぎ)の類(るい)を吸(すひ)からす虫也吸たる跡(あと)に卵あり早
く捨(すて)ざれば秋(あき)のころ生出(おひいで)て枯(か)らす事あり此外
蛞蝓(なめくじり)蝸牛(でゝむし)みな草木(くさき)を喰(くら)ふ也/取(とり)すてゝよろし
すべて蝶(てふ)の類は皆毛虫の類より化(なり)たる物なるが又
飛(とび)来りて卵(たまご)をうみ付るものなれば用心(ようじん)すべし
○穀類(こくるい)《割書:稲麦(イネムギ)の類さま〴〵の種子(タネ)ありて異同(イドウ)おほく|且/水(スイ)利によりても異(コト)なる事あれば詳にせんには》
《割書:甚長くなるべきうへにいづれの国にも其地のさまにしたがひて|力を尽(ツク)すことなればこゝにはたゞ其百分が一の事を記》
《割書:す猶後篇に委(クハ)しき事をば論ずべき也|凡(スベ)て二十種をこゝに挙(ア)ぐ》
【枠外丁数】百十九丁