翻刻
【右丁頭書】
○塩いわし 生(なま)よりは上品なり
やきて茶漬(ちやづけ)の菜(さい)にする妙なり
麦飯(むぎめし)に菜汁(なじる)などの向(むかふ)へつくべし
○さば 塩の甘(あま)きはつくりても
よろし早(はや)ずしにつけたるもよし
よく〳〵塩出(しほだ)しをすべし水だきに
してこしやうの吸口あるひはやきて
たで酢(す)をかくるもよし但(たゞし)からきはわろし
【挿絵】
【左丁頭書】
又/焼(やき)て若狭辺(わかさへん)より出すあり
京大坂にて殊(こと)にはやるものなり
風味(ふうみ)大によろし煮(に)びたしなどに
してよし又さしさばとて盆(ぼん)の頃
諸国(しよこく)へ出すものあり塩(しほ)からくして
下品(げひん)なり塩(しほ)を出したで酢(ず)に花(はな)
がつをなどあしらひて用ゆ
○塩鰆(しほさはら) 水だきにしてよし
塩のすくなきはあんかけにしてもよし
いよ〳〵あまきは作(つく)りても用ゆまた
干(ひ)ざはらありむしり身(み)にして酒(さけ)を
かけて用ゆべし
○しいら さはらに大かた同じ
少(すこ)し品(しな)おとれり
○小鮎(こあゆ)ざこ 所によりていりぼし
といふもの也これにいわしごかます
ごまゝかりごなどの差別(しやべつ)あり小鮎(こあゆ)と
【右丁本文】
一/葱(ねぎ)【左ルビ ひともじ】 十月種をまき灰(はひ)ごえを根廻(ねまは)りへ入根もとへ
わらごみをおくべし湿気(しつけ)ある細沙地(こすなぢ)によし春(はる)夏(なつ)
うゑて菜(さい)とする物/同種(どうしゆ)なれど味(あぢ)異(こと)なり苅葱(かりぎ)と
いふありうゑ付(つけ)にして年中(ねんぢう)かりて用ゆべしすべて
葱(き)の類は次第(しだい)に根(ね)に培(つちか)ひて白根(しろね)の長(なが)きを賞(しやう)
すべしわけ葱(ぎ)といふ又/一種(いつしゆ)なり春(はる)になりて分(わけ)て
うゝる故の名(な)なれど秋うゑて春(はる)早(はや)く食(くら)ふを賞(しやう)
翫(くわん)する事也/小葱(あさつき)は葱(ねぎ)の小(ちひさ)きもの也八月に
種(たね)を下し三月/初(はじめ)にかりて食す
一/韮(にら) 九十月種をまき二月分うゑて魚洗汁(うをのあらひしる)
人糞(にんふん)少し用ゆ但しこれも根(ね)を分(わか)ち秋うゑ置て
春早く賞(しやう)する方よろし
一/蒜(にゝく)【左ルビ ひる】 よくこえて軟(やわら)かなる地に浅(あさ)く植(うゝ)べし
【左丁本文】
湿気(しめりけ)ある処はわろし種(たね)は大なる方よろし大に臭(くさ)
きものなれども色々(いろ〳〵)薬(くすり)となりて益(えき)あるものなり
暑中(しよちう)これを食(くら)へば霍乱(くわくらん)を病(やむ)ことなしこやしは牛(ぎう)
馬(ば)の糞(ふん)芥(あくた)などいれ水ごえをそゝぐべし六月よ
り八月までに蒔(まく)べし小蒜(のびる)は臭気(しうき)甚(はなはだ )少(すくな)し早く
うゑてよし
一/薤(らつきやう) 白砂(しらすな)の和(やわ)らかなる肥地(こえち)によし二三月/分(わけ)て
四五本づゝ植べし湿気(しつけ)をにくむ物也/根(ね)を三盃(さんはい)
酢(ず)に漬(つけ)て食(くら)ふ味(あぢはひ)よろし
一/薑(しやうが)【左ルビ はじかみ】 少(すこ)し木陰(こかげ)ある地よろし細沙(こまずな)の肥(こえ)たる所に
うゝべし馬糞(ばふん)芥(あくた)を根廻(ねまは)りへ入れ水ごえをそゝぐ
又/人糞(にんふん)油糟(あぶらかす)を入るもよし日でりにいたみ湿気(しつけ)
にもいたむものなればよく地を撰(えら)ぶべし
【枠外丁数】百廿六