翻刻
【右丁頭書】
といふは中に白(しろ)き一種(いつしゆ)にて大坂の
川口(かはぐち)へんにてとる物也/氷魚(ひを)の類(るい)也
ちひさきはちりめんざこといふ此等(これら)
の物/日用(にちよう)に益(えき)あり煮出(にだ)しにいれ
汁にいれ或(あるひ)はそのまゝにて酢醬油(すしやうゆ)
をかけおろし大根(だいこん)たでなど入るなり
なますにしてもよし
○ごまめ たつくりといふ物なり
引さきてなますとするは古風(こふう)なり
いりつけにして唐(たう)がらしをかけ向付(むかふづけ)
にするもよし但しほうろくにて炒(いり)て
後(のち)醬油にて煮(に)ればもろくなる也
○ぼう鱈(だら) 松前(まつまへ)より出るもの京
大坂に多(おほ)し水にかしおきて大根(だいこん)白(しろ)
まめこんぶなとに取合せて煮(に)る也
大根とみそ汁【かけヵ】にするもよしよく
〳〵酒(さけ)にて煮(に)れば和(やは)らかになりて
【左丁頭書】
味(あぢは)ひよしかしたる内/度々(たび〳〵)水をか
へてよし川にかすは大によし
○いりがら かはべくじらとも云
わけぎに取合せ酢(す)みそあへに
してよし汁に入てねぶかとた
き合せたるもよし菜(な)と煮(に)たるは
大に下品なり
○鯡(にしん) 昆布(こぶ)まきにしまた平
こんぶと煮(に)てむかふへ付るいかにも
下品なる物なり白水(しろみづ)にひたし置
砂糖(さたう)あめなど入て煮(に)ればし
ぶみぬけて味ひよし
○するめ かつをぶしのかはりに
煮出(にだ)しに遣(つか)ふ引さきてなますに
しまたつけ焼にして酒(さけ)の肴(さかな)にす
る事あり又でんぶとてけづり
たるありいつれも上品なり
【右丁本文】
一/款冬(ふき) 木陰(こかげ)にうゑて肥(こやし)を用(もち)ひず細(こまか)き塵(ちり)を
根(ね)もとへ入おけばよくはびこる也
一/独活(うど) 山地(やまぢ)などの荒(あれ)たる地を二三尺もほり中を
平(ひら)にして低(ひく)き所へうゑつけ細(こまか)き塵(ちり)芥(あくた)を段々(だん〳〵)に
厚(あつ)く覆(おほ)ひ芽(め)の出る時/芥(あくた)を取(とり)のけ芽(め)を切べし
跡(あと)をもとのごとくすれば又/芽(め)を生(しやう)ずる也
【挿絵】
【左丁本文】
一/紫蘇(しそ) 正月/熟地(じゆくち)に苗床(なへどこ)を作りて灰砂(はひすな)に
合(あは)せうすく蒔(まき)て土(つち)をおほひおくべし三月うね
つくりし間を遠(とほ)くうゝべし大方(おほかた)は肥地(こえぢ)の畑(はた)の
端(はし)々に少しづゝまきおけばおのづから栄(さか)えて一(いつ)
家(か)の用にはたつものなり
一/芋(いも) 芋に種々(しゆ〴〵)あれど青芋(ゑぐいも)殊(こと)に根(ね)の多く出
来るもの也/紫芋(たうのいも)又/味(あぢは)ひよし池(いけ)川(かは)の辺(ほとり)など
水気(すゐき)ありて湿気(しつけ)のもれやすき所の軟(やはら)かなる所
よし深(ふか)さ二三寸にうゑて牛馬糞(ぎうばふん)のあくた枯(かれ)
草(くさ)の類を根廻(ねまは)りに入れ追々(おひ〳〵)に土(つち)をかくれば
子(こ)おほく出来るもの也十月に掘出(ほりいた)し日あたり
よき地(ち)を深(ふか)くほりて埋(うづ)めおけば冬春までも
よくもつなり茄蓮(はすいも)は茎(くき)葉(は)を生(なま)にて食(くら)ふべし
【枠外丁数】百廿七