翻刻
【右丁頭書】
◦料理珍味集といふもの
ありあらゆる珍味(ちんみ)を挙たる
書(しよ)なり其中よりたやすく
出来べき事をぬき出して
いさゝかこゝに書つく
○桔梗(きゝやう)玉子 玉子を煮(に)ぬき
皮をさつて又/湯煮(ゆに)をしきゝやう
にして又/湯煮(ゆに)をすれば内の黄身(きみ)
ともに花(はな)のかたちになるなり
○白田楽(しろでんがく) 豆腐(とうふ)を常(つね)のごとく
田楽(でんがく)にして味噌(みそ)をごまあぶら
にてときやかぬとうふにぬりて
焼(やく)なりみそこげずして内(うち)へ火
よくとほるなり
○とろゝ汁 つぐね芋(いも)をすり
生栗(なまぐり)を一ッすり入れ和(やは)らかに仕(し)
たて鍋(なべ)へうつし煖(あたゝ)むるに切(きる)る事
【左丁頭書】
なしつよくたけばねばりつよし
そろ〳〵たくべし又/伊万里焼(いまりやき)の茶(ちや)
わんを入てあたゝむるもよし
○みかん鱠(なます) みかんの袋(ふくろ)をう
らがへして十五六ばかり皿(さら)にもり
砂糖(さたう)をかける也
○兵庫煮(ひやうごに) 小きはもの腸(わた)を
さりこぐちより骨(ほね)ともに薄(うす)く
切うす醬油(しやうゆ)にて煮(に)る也
○芹(せり)づけ 根(ね)ぜりを菜(な)のごと
く塩づけにして酢(す)しやうゆをかくる
○苺子汁(いちごじる) 車海老(くるまえび)の皮(かは)を去(さり)
身(み)ばかりたゝきすりて丸(まろ)く小く
して汁へ入れば色(いろ)赤(あか)くなる也
○雲掛豆腐(くもかけとうふ) とうふをよき
ほどに切/米(こめ)の粉(こ)にまぶしてむし
わさび味/噌(そ)をかくる
【右丁本文】
灰(はひ)を以て覆(おほ)ふべし六十日ばかりして畦作(うねつく)り
し一株(ひとかぶ)に二三本づゝ植(うゝ)べし植(うゑ)て十五日ほどして
水と人糞(にんふん)と合せてそゝぐべし其後(そのゝち)はこき糞(こえ)
よし干鰯(ほしか)なともよしさて虫(むし)をはらふ事第
一/念(ねん)を入べし虫(むし)つけば栄(さかえ)ぬものなり
一/紅花(こうくわ) 植(うゝ)る地こえたれば花(はな)の色も甚(はなはだ)よし赤(あか)
黒土(くろつち)の肥(こえ)たるに作るべし霜月(しもつき)/初申(はつさる)の日/種(たね)をまく
べしといへり種(たね)は酒(さけ)に一夜(いちや)浸(ひた)し灰(はひ)ごえに合せて
うすく蒔(まく)べし苗(なへ)二三寸の時/葉(は)にかゝらぬやうに
水糞(みづごえ)を入べし後(のち)にはかゝりても厭(いと)はずさて四五月
ごろ花(はな)のわきに垂(たる)るを見てつむべし
一/煙草(たばこ) 地を冬(ふゆ)より二三度も耕(たがへ)し糞(こえ)を打
さらしおきて正月に焼草(やきくさ)を多(おほ)く入てこえをかけ
【左丁本文】
【挿絵】
正月/末(すゑ)うね作りしうすくちらし蒔(まき)にすべし
雨のふる日少しづゝ水糞(みづごえ)をそゝき茎(くき)のよわきを
抜(ぬき)すつべし赤土(あかつち)に小石(こいし)小砂(こすな)まじりたる如き地(ち)
尤(もつとも)よし山里(やまざと)の霧(きり)深(ふか)き所はあく少くして
名葉(めいは)を出すなり
【枠外丁数】百卅七