翻刻
【右丁頭書】
○豆(まめ)の葉 そら豆(まめ)の葉(は)を洗(あら)ひ
て渋紙(しぶかみ)の上にほし乾(かわか)しよくもみ
すいのうにてふるひておき入用の
節(せつ)すいのうへ入れにえ湯(ゆ)へつけ
蓋(ふた)をせずしてゆで飯(めし)和物(あへもの)などに入
○蒜汁(にゝくしる) にゝくに生姜(しやうが)をいれ
ゆでゝさましおきて汁にもちゆ
臭気(しうき)なし
○えびあへ いせ海老(えび)をゆでゝ
身ばかりをさきえびの子にて
あへものにする也
○煎松茸(いりまつたけ) 松たけ笠(かさ)ぢく
よきほどにうすく切から鍋(なべ)に
入れいるあくけ出るをすてゝ
しやうゆをさしいりて柚酢(ゆず)をか
けるなり
○塩釜(しほがま)やき 大鍋(おほなべ)に塩(しほ)を入
【左丁頭書】
生鯛(なまだひ)のうろこをふきわたをつ
ぼぬきにして右の塩(しほ)にまぶして
蒸(むし)いりにしてしやうゆをかける也
本法は浜(はま)にて塩(しほ)をやく時右
のごとくしてわらづとにし塩釜(しほかま)
にて煮(に)る塩かげんよくして
少しも辛き事なし案(あんずる)に
鯛(たひ)の料理(れうり)は此上に出るものなし
但し鱗(うろこ)をふかずそのまゝに苞(つと)
にする也/色(いろ)赤(あか)き事/紅(べに)のごとし
生姜(しやうが)じやうゆにて用ゆ鍋(なべ)に
てにる時は水(みづ)をはなしてむして
よし塩(しほ)のいる事少くして
身(み)に水(みづ)けなく妙なり
○酒飯(さかめし) 酒(さけ)茶(ちや)わんに七分目
しやうゆ同しほど米(こめ)壱升の飯(めし)
にいれ常(つね)のごとくたくなり
【右丁本文】
一/寒中(かんちう)雪(ゆき)の降(ふり)たる時/雪(ゆき)一升に塩(しほ)三合あはせ
せんじて壺(つぼ)にたくはへ置/松茸(まつたけ)を漬(つく)べしいつまで
も味(あぢ)かはらず《割書:此法瓜茄子竹子|青梅何れにもよし》又方/松茸(まつたけ)をざつと湯(ゆ)
にたきて水にひたし取あげ水気(みづけ)なきやうに
して桶(をけ)に塩(しほ)をいれ松茸(まつたけ)をならべすしの如く
漬(つけ)ておもしをおくべし又方水一斗に塩一斗二升
いれせんじてよく冷(ひや)し置/桶(をけ)の底(そこ)へ青松葉(あをまつば)を
敷(しき)其上に茸(たけ)をならべ段々(だん〳〵)にかくのごとくして
塩水(しほみづ)を入/蓋(ふた)をしておもしをかくべし
○青柚(あをゆ)のたくはへやう
一/柚(ゆ)の小(ちひさ)きを枝葉(えだは)ごめに取/器(うつは)にいれ塩(しほ)にて
埋(うづ)め銅(あかがね)のきれ又はやすり粉(こ)にても少し入て風(かぜ)
のいらぬやうに蓋(ふた)をしておけばいつまでも青(あを)し
【左丁本文】
また綿実(わたざね)の中にすれざるやうに入おくもよし
又方/青柚(あをゆ)十きざみて水一升/塩(しほ)六合と共(とも)に能(よく)
せんじ其汁をさまし置て新(あたら)しき青/柚(ゆ)を漬(つけ)
壺(つぼ)に入て口(くち)をかたく封(ふう)ずべし
○塩辛(しほから)の味(あぢ)かはらざる法
一/塩辛(しほから)少しになりても砂糖(さたう)をすこしいれ
おけば味(あぢ)はひいつまで置てもかはらぬもの
なり
○筍(たけのこ)を貯(たくは)ふる法
一/竹子(たけのこ)を桶(をけ)にいれ蓋(ふた)をして河(かは)の瀬(せ)の早き
所にうづめおくべし但(たゞ)し上に石(いし)をおくべし
また塩湯(しほゆ)にて少し湯(ゆ)びきよく〳〵干(ほ)して
壺(つぼ)に入おくべし八九月の頃(ころ)取出し又ほすべし
【枠外丁数】百四十