翻刻
【右丁頭書】
上方(かみがた)にてははしりを賞(しやう)して價(あたひ)
甚(はなはだ )貴(たつと)しその比(ころ)はものゝあしらひ
に少しづ ゝ用る事也また皮(かは)をむ
きたるを上方の詞(ことば)にはぢき豆(まめ)と
いふ品(しな)少しおとれり蕗(ふき)焼(やき)どうふ
などゝ同じくにしめ又汁にもすべし
実(み)の入/過(すぎ)たるは下品とす
○えんどう 白(しろ)き花(はな)のさくものは
さやにすぢなし味(あぢ)甘(あま)くして上品
なり竹子(たけのこ)ふきなど取合(とりあは)せてにしめ
にすべし実(み)のいらぬほどは酒(さけ)の肴(さかな)
にも用ゆあへものにしてもよし
○竹子(たけのこ) 孟宗竹(まうそうちく)の子(こ)を近(ちか)き
ころ殊(こと)に賞(しやう)くわんせり油にて
いためにしめにし又ゆで ゝからし
あへにし或(あるひ)は葛(くず)をつりて平(ひら)にも用
ゆ汁にして木のめはさんしやうなど
【左丁頭書】
吸口(すひくち)にすべし此外さま〴〵用(もち)ひ様(やう)
ありこんぶと煮(に)しめたるは品おとれり
○菠䔖草(はうれんさう)【注】 和(やは)らかにして甘(あま)く
上品なる菜(さい)なり汁にして柚(ゆ)木芽(きのめ)
などあしらひたるよししたしものに
用る事/通例(つうれい)なりけしをかけて見
るなり煮(に)ものゝあしらひに遣(つか)ふも
上品なり
【挿絵】
【注 「菠薐草」の誤ヵ】
【右丁本文】
かたく巻(ま)くべし和(やは)らかなるは余(あま)りにしめぬがよし多く
まかぬかた肉(にく)のあがりよろしき物也さて砧(だい)の木口(こぐち)より
つぎめの処を打わらにて包(つゝ)み其上を竹皮(たけのかは)にて
ほにさはらぬやうに雨覆(あまおほ)ひをすべしさてほは
砧(だい)太(ふと)ければ二三/本(ほん)もつぐべしもし枯(かる)ることのある
時の用心(ようじん)なり残(のこ)らずつきたる時は勢(いきほ)ひのよきを
一本(いつほん)残してあとをば切棄(きりすつ)るなり又/砧(だい)より芽(め)を
生(しやう)ずれば皆(みな)かぎ取べし芽(め)多(おほ)く出(いづ)れば砧(だい)の
勢ひわろくなる也一二丈も上の枝へつぐを高接(たかつぎ)
といふ接様(つぎやう)かはる事なし但(たゞ)し竹(たけ)の皮(かは)の内(うち)接(つぎ)た
る砧(だい)の処を土(つち)を入て草(くさ)を植(うゑ)おくべしほの少し
出るほどに入る也/日(ひ)をよけうるほひを持(もた)する為(ため)也
又/呼接(よびつぎ)とて枝(えだ)をよびてほを切はなさずして
【左丁本文】
つぐ事ありこの法にてはいかなる木もつくる【事ヵ】也
これは先(まづ)接(つぐ)べき親(おや)木を横(よこ)にふせて植(うゑ)枝(えだ)の地に
近(ちか)き所に砧樹(だいき)をうゑそへ砧樹(だいき)の皮(かは)をけづり捨(すて)
ほの皮(かは)を其寸ほどにうすく削(けづ)りて合(あは)せつぐ也
又/水接(みづつぎ)といふは生花(いけばな)のごとくほの元(もと)を水にいけて
よび接(つぎ)にする也水は度々(たび〳〵)かへてよし又さし接(つぎ)
といふは地にさしてよび接(つぎ)のごとくする也また
身(はら)接といふは砧(だい)の切口より一二寸も接口(つぎくち)を下(さげ)
てつぐ也/是(これ)は夏(なつ)の比など木の勢(せい)かれくだる
ゆゑに如是(かくのごとく)するなり其外よせ接(つぎ)といふ有
これば【濁点衍ヵ】おやの木を其まゝおきて砧(だい)を鉢(はち)にうゑ
或は根(ね)を土(つち)ながら藁(わら)づとのごとくして接(つぐ)べき
枝(えだ)を引たわめ木をうちてしかとゆひつけて接(つぎ)
【枠外丁数】百十五