翻刻
けるは仰にては候へ共事に社より候へ今にも風出れはあ
のあら磯に有船なれははや流れ申すなり然れは
何の詮もなし只御/免(メン)ありて浦人を頼み船をたすけ
度しと様々に申けれは両人腹立して奉行たる者か
分て事をしらするに其上に何かといふそ藤七つれて
帰れと怒りて奥に入けり是非なく宿へ帰り其日を
待こそ久しけれ浜に居る水主ハ翌日夜をこめてそ
八の戸に来りいかにといふにされは此通也明後日の早旦に
は船請取へきか此浦の者共は中〳〵頼まれましといふ汝は
急き大畑へゆけ水主共をよひつれて参るへし船請取
なは引舟を頼て湊の前へ廻はすへきそいつより急けと
申含めて出しけり扨も此ほとはいつよりもよき天気かな
いまた仏神も捨果給はすと心中に祈念して社待
たり其間に彼代官舟奉行金浜近辺の/在人(サイニン)を
集め船を引付/鈇(ヨキ)/鐇(マサカリ)にて散々に切わり/釘鉄羽(クキカスガイ)諸
材木船道具はいふに不及其辺の田の中山の奥にかくし
入たり是をは夢にもしらす八の戸にたゝ/茫然(バウゼン)と
して居こそはかなけれ其内に六月十八日に成に