翻刻
けるけふハ隙なりいさ浜へ行へきとて山崎宮野ハ/上馬(シヤウメ)
藤七我等ハ/歩行(カチ)也頓て浜に着てみるにはや船は
なし漸材木少々/船(フナ)がうら/柱(ハシラ)/梶(カチ)の/形(カタチ)を一所にかたつけ
置たり両人馬よりおりて扨其方か船印ハ何そ材木
の印/梶(カチ)/檣(ホハシラ)もよく見るへしといふ/下(シモ)の者共爰かしこ
走り廻りける我此かうら共を見て暫く涙くみたり
皆見て笑ひたり扨両人に申けるハ是は我船にては
なし某か船は六枚ニがひの新艘にて中物は大板千三百枚
橎二千五百丁角物大小二百本寸法百丁積入たり其外
船具等少も相違は候はす左様の船を渡し給へ材木一本
違ふても中〳〵請取申ましといへは両人聞て何といふそ
船頭に左様の舟のあるならはわがにせよ扨は是は其方か
舟にてはなきかあらむつかしの船頭也兎角逃たる
かよしといふて馬に打乗帰りけり我身も跡より又八の戸
に行藤七を先達て両人へつめかけさりとては是に三日
留られ申す内にあのことくに/切破(キリワリ)候御吟味なされ天下
の御法に御沙汰候へ假初に被成は後はむつかしくあらんとつめ
かけ〳〵申ける両人申けるは船は浜にてわれたり然れハ