翻刻
江戸の事か唐迄も行て非を理にせよ早々と云て
座を立私宅へそ帰りける無是非又山崎宮野か方へ行
兎角御恩に預り度候也只少の御吟味候得さらずは
近辺をやさがし仰付られ下さるへしと様々にいふ両人
聞ていや〳〵佐右衛門頭の領内を他国者に見せん事
思ひもよらす兎角船の/破(ワレ)たるは誰もしるまいそ無
用の事にかからんよりとくして帰れと申ける奈山
秋本は二度よせす代官船奉行は大に/怒(イカ)る六月十五日
より七月の始迄或時は恨みて泣亦或時は/怒(イカ)りてみつ
十八日の其間に百手を尽すといへとも更に承引せす
後には藤七を呼付あのわけなき船頭をいつ迄
置そ急てかへせ宿かすな其方共にむつかしから
んといふ程に今ハ力なしかる不埒の所に/長詮議(ナカセンキ)
して却而命とらるゝもしらす兎角思ひ切ふと
思案して切捨たりし梶一/羽(ハ)後日の証拠に請取
湊村への廻し賃に金壱歩相渡し藤七より預り手形
を取亦市にて板四枚橎木十七丁押取藤七に預け
是も手形とり其外いやといはれさる証拠共三ツ