翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

海陸世話日記 - 翻刻

海陸世話日記 - ページ 21

ページ: 21

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たくひにもあらんかなと思へは古郷恋しくて不覚の涙に /咽(ムセ)ひけり弟共水主は何の心そしらね共暫の別たに 悲しみて涙を袖に懸てそ立にける扨しも有へき 事ならねは船共は佐井大畑を出船して順風に帆を 上たり我も宿より出船の帆影の見ゆる迄岩の上へ あかりさらはの声も遠けれは扇をひらき笠をあけ 暫く泣てそ立にけるやあ是は不覚なり迚死日に至 ては妻子珍宝及ひ高位も更に不随親兄弟もいら はこそ勇はかうになると聞と思ひ返して其まゝに急き 宿へたち帰り旅人や亭主にも/暇乞(イトマコヒ)して本の/田名部(タナベ)へそ 出るける扨も旅の装束は袷一ツに古羽織二歩にもたら ぬ遣金廿日あまりの旅の空何としてかは行へきそ天下の 公事をすへき身の此体にてはいかならん我身なからも 腹筋や然るに京大津の見世売衆か聞付扨々其方は /歩行(カチ)にて国へ上るとや我は/脚絆(キヤハン)わらんぢかけ人は もゝひき笠合羽手拭煙草とくるゝ程にはや〳〵歴々 の男となる一両日は旅の装束拵へて其後暇を乞ひて 八月十五日田名部の宿をそ立にける扨道すからの名所