翻刻
鹿の/臥戸(フシト)となる人間の一生唯/夢現(ムゲン)の如し誰か百年を
経る人あらんやしらさる昔をおもひつゝけてかくいひ
しもおかし「いにしへの花の宿りも散過てたた草ふかき
野へと成ける夫より/築地(ツイチ)に上り四方を/見廻(ミマハス)に西ハ衣川北
上の大河桜川東は沼にして巌壁也中〳〵かかる名城
の一時に/亡(ホロ)ひしは御運の末やらん誠に大将と申は仁有智
あり勇あり礼を/篤(アツ)ふして人をなつけ民を/憐(アハレ)む古今にも
又有かたし相/従(シタカ)ふ人迄も/爰彼(ココカシコ)にて手柄を顕し
一人当千の勇士なりされは天の時は地の利にしかす地の
利は人の/和(クハ)に不如といへり又大敵する事なれは遂に
討死し給へるとや大将北の御方若君の御最期は
爰やらん鈴木兄弟兼平か討死はかしこやらんと/独言(ヒトリコト)して
「将ニ見ル高舘形影ヲ/詒(ノコス)古今ノ名将/喪亡(サウホウ)ノ地山川
不_レ/答(コタエ)思悠々惜ヤナ勇士徒ニ為_二戦死_一 ̄ヲ夫より南の山
/続(ツヽキ)に泉か城を見たり忠平に兄の方へもなりはせて妻
諸共に捨ん命をはやけふの日も西に/傾(カタフ)く名残おし
くも高館は跡に成沢打過て/往来(ユキヽ)の人の集るは一のせき
屋のかり枕鳥諸共に出の里玉水は名のみ有明の