翻刻
月の光もまだ西にありかへの宿を打越てかんなり沢辺
の水増て早高/清水(シミツ)に/鳴戸(ナルト)橋打渡りつゝ行程に
これハ荒屋の軒端より亦名を替て古川の森の此方
に三本木其夜はそこに泊るに宿のあるしか心ありけにて
四方山の事共咄す我いひけるは聞は松嶋こそ此辺と
かや是より道は何程いつくをさして行候そ亭主いひ
けるはされは其松嶋は日本無双の景地也道を急き
給はすは少寄て見物あれ是より七里此間には宿なけれ
は馬もなし物さひしき道也松嶋より仙台へも七里
なり/直(スク)に行は八里なり兎角心にまかせよといふ扨は是大
きなるまはり也急きても猶あまりある事なれと今此
道を通る事不思議の縁也本国にて朋友の/土産(ミヤケ)共すへし
と思ふ計をしるへにて夫よりも道をかへ松嶋海道へかゝ
りける誠に亭かいひしことく田ぶちをつたふ細道也暫
行て小村ありさる家の縁に腰打かけて水なと所望して
やすらふに其在所の子共とみえて多く集り我をみて
一度に手をうちとつと笑ふ伝へ聞五条の中将天女の姫
をばらもん王に奪ハれ出家となりらせつ国に行給ふに