翻刻
者此所始て一見致す也といへは扨は遠国の者也
爰へ来るへし是ハ/金輪際(コンリンサイ)より之/涌出(ユ シユツ)せし切通の岩屋
なり扨あれは千体仏是はふじ池如来堂能々拝めと
ありし程に実や此所は中〳〵凡人の見立にあらす
空海のいにしへ此所に下向有之衆生罪悪さかりにて
八万四千の煩悩のきつなをよりし里と打切てごんぐ
しやうとの道に入しめんか為にひらき給ふとやそれより
浜に下り海上遥に見渡せはさぶさの大嶋沖に
横引それより三里の入海に嶋は百々をかさねたり
其折ふしは塩干潟嶋々は皆うき出或は木有嶋も有又は
青苔岩をつかむもありさて嶋あひの帆掛舟はかそふるに暇
あらす嶋あひの雲の梢をつたひ手くりする海士小船は
/盆山(ボンサン)に雲をうゆるか如し也いかなる絵師も筆にはいかて及ふ
へき誠に一時の栄耀に千とせをのふとはかゝる事をや
申へきあら面白やとうち詠め口を開き目をひそめ万のうさを
うち忘れ浜の真砂にはらはひしていつくにもかゝる名所は
よもあらし是そ誠に奥の京かな狂歌とやらん口すさみ
また一綴とておかしき事そ思ひ出ける「/遥(ハルカニ)看_二 ̄レハ海上_一ヲ