翻刻
本堂を見上れは/七宝(シツホウ)を/琢(ミカ)き又大きなる事は言葉
にも及ひかたし只あきれて立たりける拝殿にあかり
袖かき合せそもや六社の大明神はかけまくも此神は
霊験あらたにまし〳〵て彼秀衡の守護神也と
きく今とても頼む心に違ひはあらし我今思ひ
あり願くは正直の首に宿り心のうちの苦しみをはら
し給へと心静に願念しそれより庭に下りてみれは
井垣の内の脇立ハ稲荷貴船/糺(タヽス)の宮扨其外の諸
末社は見るに暇のあらされは御前を下向して
町に下るに数百軒の家共海の/廻(マハ)りに立ならふ又渡
海の廻船はやぐらの下にともへを並ふ町中に明神の
下まえ十余町の堀川あり塩干潟には水もなしみつれは
彼大船共川を上る所とて/夥敷(ヲヒタヽシク)木場あり扨又東の
磯際に塩釜ありと聞程に頓而行て見るに是社千家
の塩釜とて口ハ一丈余りにして深さは五寸計也台
にのせそれに塩水/八分(ハチフン)に入たり今此釜にて役人の
あらされは六社の神具と成とかや/当時(ソノカミ)/嵯峨(サカ)天皇
の御宇に融の大臣此/塩竃(シホカマ)の/眺望(テウバウ)を都のうちに