翻刻
は宿をかすにむつかしく先御自分なれは国は/何国(イツク)
何方へ通らる荷物は有やなしや若此/旅(タヒ)人に何様
の/口舌(クセツ)出来る共一夜の宿罷出急度相唀へきの手
形を認め町奉行へ上る也/連(ツレ)の五人も三人もあらは社其
六ケ敷事もすれ一人にはかさぬなりそれを尤と思はるへ
しそれも七ツより前方ならはかしやうもあれと中〳〵
日暮たり今町の内一里計行て橋有向ひは永町といへり
そこにて宿かるへしといふ力なくかしこへ行に何様町の内
一里余も来ぬると思ふに大なる橋有渡りて宿をかるに
猶/怒(イカ)りてかさす扨はいかゝせんと思ふにせめて月夜なれは
よきに八月廿四日のしかも空うち曇りて風/茫々(ボウ〳〵)と吹物
冷しくして/目(サス)とも不知道の案内もなきに腹はすく
あきれ果て立たるに辻番の者ともこゝな男はたるひ者
た町にてさへ泊り得ぬうろたへ者まして爰にかすへいな
はやくゆきなひかと棒をならす恐しさに町の末に出て
行方をみやれは東西くろふしてそこ共更に不弁よしや今
夜此道にて豺狼の餌と成共ゆかて不叶事なれは其永
町と立出て今は我身に秋の夜の風冷しく吹落て