翻刻
音とも声々にて中〳〵野原より冷しく膝をかゝめて宿の
事とふにしはしまて/咎(トカ)なきなからとかめにあひ結句むつかし
からん今は事の外に草臥たり此宿の末にて野宿せん
と思ひ得てみれは刈田のあとに/大豆木(マメキ)つぶり有三四把
引寄て立並へ其内に/刀(カタナ)を枕にして伏ける仙台より道は
五里余り来る草臥はする腹は中〳〵かひなし只今何者か
来て命を取るもしらは社誠に一朝の怒に其身を
忘かといへる/類(タグ)ひにもやあらんか今夜いかなるばか者か
見付てためしものにせは彼存念も晴すして空しく
果ん事是何の為そや兎角名利の捨かたき身こそ
悲しけれ我なから浅ましき事を思ふて「名をおもひ
欲に迷ひの雲あつく晴る心のなき身社うき「行暮
て此みちのくの草枕いつかかたりてうきを晴さんうたゝ
ねの夢見る隙もあらハこそ頓て海道に/人音(ヒトヲト)せり/目覚(メサメ)はひ
出てみるにはや日は/巳(ミ)の時也人も通り馬も行通行人
我を見てふしきといふされは夕/宿(ユウベ)取かね爰に臥といふ
皆人あはれといへりそれより岩間といふ所にて/朝支度(アサシ タク)
し其岩間を/突(ツキ)ぬけの宿うち過て舟沢や大川原に