翻刻
寄波も金か瀬こへて見渡せは思ひか猶そ織田の宿此
行先は/白石(シライシ)と人も片倉小十郎の六万石にてかため
たり誠に小城といひなから/要害(ヨウカイ)第一の通路はうしろ
ハ巌石峨々として/苔滑(コケ ナメラカ)にして道もなし扨又東の通ひ
路ハ宿を切ぬき道とする/函谷(カンコク)の関ともいふへき也東八州
の剛敵か百万騎にてよするとも破り難くそみえにける
是をも通り行程に/娑婆(シャバ)にもさいの河原やと名を
きくたにもこすごの宿其里〳〵の人まても我をあはれ
と飯田の宿爰こそ織田の郡とや彼四郎か城山三方か岩
壁にて中〳〵鹿の通ひの路もみえす扨一方は/九折(ツヽラヲリ)の
/細(ホウ)道見えたり其山の麓にかの次信忠信二人の/嫁達(ヨメタチ)
をあら人神といはひし小性堂にまいり其名を得たる
弓取の忘れ形見かとはかなき事共を思ひて木像
をつく〳〵と見居て俤もやさしき姫の姿哉まことの
人はさそやあるらん扨立出て行程に藤田の宿のかり
まくら爰にかゝりの宿過て瀬の上宿の人まても
誰を忍ふの郡とやいか様佐藤の/郭(クルハ)こそ聞まほしやと
思ふ所に山賎の薪を/樵(コ)りて来るいかに山人むかしの