翻刻
佐藤殿の跡教へてたひ給へ木こりかいふやうされは社其所
は海道にあらすあの南を見給へ沢野といへる在所あり
其村に彼跡をまする寺あり実に御覧有てはそこへ行て
尋へ給へ是より二里の寄そと語る扨いかゝせんと暫く思案
してそ立けるとかく見て社物語よそれ程はまた道を急
かんまてと思ひそれより寺へ行に事の外なる大寺や先案
内こふて立に小僧出て縁をひらき方丈へつれ行に/御(ゴ)
/坊(ハウ)のいはく扨は是は/何(イツ)くの人そ我は加賀の者なるかむかし
の跡を一見致し度て参し也御坊のいへるは扨遥々の
道なるによくそ寄給へるそや先是へとある程にさし
寄てみれは其結構なる事/善尽(センツク)し/美尽(ビ ツク)せり仏
段には名もしらぬ諸仏をかけならへ前なる卓には
諸経山のことく積上たり花水香の匂ひし今既
に盛也亦座敷には/金貝摺(カナカイスリ)たる/鞍鐙(クラアフミ)/鎗長刀(ヤリナキナタ)
まて/取(トリ)散し只今事の有様なり其後小僧を案内
にて彼かまへにゆくに流れ一筋なり是は何とかいふ
川そと問に小坊か答へけるはするが見の川とて此構
の要害也といふそれより上り見るにあはれむかし