翻刻
御屋鋪えと心さし問々して行程に南部を立てけふはゝや
日数積りて十九日道のほとは百八十七里なりとそ覚ける
去程に御屋敷にもなれは惣門の番衆我をとかむ是は御国
本吉崎の与四郎か南部より参りたるそと申けれは扨はとて頓而
我を伴ひ鶴見藤右衛門殿へ行かくと云内より小姓出て御会所へ
つれ行御侍には御聞番に鶴見藤右衛門殿同仙場十郎右衛門殿御会所
頭には青池弥右衛門殿同今井甚左衛門殿御割場には石黒九郎兵衛殿
其外寄合給ひしか我か名を聞一度に座敷をはらりと御立
扨々珎しや汝か沙汰/頃間(コノコロ)国よりの便に知たり扨も不仕合かな
今下より来るや先あかりて茶を呑へしひたるきはなきやと口々
にの給ひけるかたしけなき事共や其時縁に上りうしろに/負(オヒ)
たる風呂敷より目安一本取出し各様の前に置ける何も
見給ふに今度南部八の/戸(ヘイ)にて船切破れしに依て御伝
奏迄御断申上度の書付也其時皆々近く寄給ひ有増を
聞給ひ尤汝か申所は去事なれとも是はゆゝしき大事そよ只今は
殿様も御留守の砌也此事申上勝たり共何程の事か有へき若又
まくるに於ては汝か命爰にて殺さるゝ事はいふに不及屋敷の
外聞いか/計(ハカリ)とか思ふそ其上あなたは大名そいかに対せんや十に