翻刻
ひとつ御取上有まし若取上給ふ共今年や来年には中〳〵
埒は明ましきそ兎角思ひきり屋敷にて足を休め江戸
中を見物して早々国へ帰るへし親一門等も待へきなり路銀も
なくはかすへしと/細々(コマ〳〵)とそ仰ける其時我等の申やう御尤候
去なから八の戸に留置其間に船を切取剰唐迄も行やと
いふて宿を追出し候其上は此事思ひ/企(クハタテ)て田名部をたちし日
より理を胸に納め/屍(カハネ)は江戸にさらさむと思ひ儲て参りたりたとひ
申分不届して事六ケ敷なれは御屋敷の大事也兎角御難の不
_レ懸やうに伝奏の御門を掛にして年を重て申上シ今は御暇申町へ
出しと立にける其時弥右衛門殿仰けるはかほと迄思立し故は兎角に留る
まし此上は汝次第よ扨尋常の事ならはいつ迄も屋鋪にて/育(ハゴク)
まんに是は品ある事なれは屋敷には/置(ヲカ)るまし宿はいつれかよかるへし
其頃御屋敷へ出入少用なときく後藤彦六と云仁あり是よかるへしとて
頓而御使立彦六参り当分の事に候はゝ畏るといふ今井殿仰には
扨は宿も有心安く先我等の宅へ参へしとて夕料理は今井殿
にて給はり日暮て宿へ行後藤に対面し彼始終を/細(コマカ)に語
に彦六《見せ消ち:目|黙》然と聞是はいはれましき事にてなし左あらは
目安/目論(モクロメ)に今は其方か運次第也此十四日は伝奏の式日とて