翻刻
あらし兎角判を出し彼者□と押合聞へし去なから
佐右衛門方へしらせよと傾て訴状を渡し給ふ南部殿には
不思奇事なれは屋敷中/騒動(サウトウ)して聞番井上半平か駒
に鞭をすゝめて甲斐殿へ馳来り訴状の通り承り先其
船頭を佐右衛門屋敷へつかはされたし一口上聞て国へ飛脚
を立申さんと申をきてそ帰りける又廿日に甲斐殿へ上る
家老の丸三右衛門のいひけるは佐右衛門殿より船頭是へとあれは
急き行へしとあり畏て後藤諸共に本庄柳原佐右衛門殿
屋敷に行かくといふ中屋鋪台を開き入て煙草茶を
出す其後侍多く出る先聞番井上半平同玉井与兵衛其
外一家の侍十余人我等を中に/取籠(トリコメ)右の脇に若侍硯
に向ひ我か/云(イフ)事を書/留(トム)るとみえたり扨半平いひけるは
いかに加賀の船頭殿八の戸浜にて船破損に付是まて
来らるゝとやしかれは浦の者共か何としたると申さると
聞たしといふ我かいひけるは何船破損に付来るとの
給ふかそれは以の外なり破損せは何の申かあらん金浜
の盗人等か何共なき船を/切破(キリワリ)ぬすみ取し故に是迄参り
此事を申さんも相手なけれは/片口論(カタコウロン)なり急き彼悪