翻刻
まかせいふ共それは証拠に成まし切/破(ワリ)て盗取し証拠は/口(クチ)
にては成ましそ此方の者共にも口有何と/利発(リハツ)にいふとも今
伝奏にて/口(クチ)は証拠に成ましと/顔(カホ)をふりてそ申さるゝ其時
彦六是に返答は何とかすると大息つゐて赤面す我/騒(サワ)く気
色もなく其舟波にて破れたるか亦/鐇(マサカリ)にてわりたるか悪人共を
召出され我前にて御尋あれや爰にては申事にてはなし今度
伝奏にて申へき事なれどさらは証拠を御目にかけん盗人等
切残したる梶一羽宿藤七に預け置何にて切たるか検使にて御
覧あれ扨又田名部の御定には材木一本ぬすまれたらは見つけ
次第に百本にて取かへせとの御定目是も四郎左よく知たり然□
に我か材木をぬすみ取て八の戸の市にて売しを見付㠶/橎(ハン)十七挺
板四枚/押(ヲサ)へ取て是も宿に預けいつれも手形是に有百倍の
盗人は御国なれは藤七よく知られたりと弐枚の手形を取出し是〳〵
と云後藤聞てそれは我も今見たりよく今迄はみせさると云て
頓て色を直す山田柴田もあきれ果暫く無言にて居られ
たり彼者共障子の内に聞届るといへ共我出て問答せんと
いふものなし佐右衛門殿の侍は/拳(コブシ)を/握(ニキ)りのひ上り彼等か方
を見やれ共兎角にをともするにこそ彼両人いひけるは先