翻刻
/麓野(スソノ)の古木紅葉をましへもみち/降敷(フリシク)秋の空南は田子の
入海/漁村(キヨソン)の煙風に/靡(ナビ)き西の沖なる大船は順風に帆をあけて/滄浪(サウロウ)
に歌うたふは唯夏月も/漸(ヤウヤク)盛かと疑ふ天竺震旦の五大山も是
には過し今日は殊更晴天にて/浅間(センゲン)菩薩の社まて無残みえて候
彼浜に見えたる/砂盛(スナモリ)こそ衣ほすてふ天の香久山よ前なる海を見
給へ東西二十八町有あの小舟に鮎をとるを見物あれ此所の名物そ
先かばやきまいれと語る実面白やされは古今の歌人もよめるは/富
士(フジ)の山也何とそいひたく暫く有て狂歌とやらん「言の葉は/不尽(フジ)
とやいはむ此山のかきりしられぬ詠をそする「/仰看(アフキミル)富士
/■山(セツセン)ノ
空/嶠路(キヤウロ)払_レ ̄テ雲満_二蒼穹_一 ̄ニ影ハ入_二 ̄テ海中_一 ̄ニ魚似_レ登万方ノ美景/秀(ヒイ)
ツ_二東_一おかしき事を/綴(ツヽ)り茶屋にも恥かしさにはや旅立の
思ひ出に吉田と聞も頼もしやうかひ富士川うち渡り此行
先はかん原と道行人かいひの宿沖津しら波打よせて
後に別れの明神と■かねと爰に/言(イヒ)川やさつたか/嵩(ダケ)にうち
上り末をはみちの野原と清見か関のかり枕夢もむすはぬ
うたゝねに清見寺の鐘の声諸教無常と聞からに里に
鳴鳫は何にたよりて松岡の府中町に来てみれは見世に積
置染/紙子(カミコ)国のみやけにするか橋あべ川に立出渡らんと