翻刻
中橋渡すかけ川やふくろひ縄手を遥々と見付の宿をうち
過て/名盛(ナモリ)の里はそうか山音に聞えし/天龍(テンリウ)もこやすの宿と
聞からにあんま橋をも打渡り浜松こへて詠れは我身の
年も若林あかつか山のこなたこそはや前坂と聞からに是より
/荒(アラ)井まて二十余丁の大渡しこかれて出る渡し舟浪もあらひの
宿につく爰にも天下の買所有て女人と鉄炮改るむかし
語りも遠江の浜名の橋も跡計猶行末は白須賀の塩見峠や
打上り跡振返り詠むるに名におふ富士は空晴て/能(ヨク)は三崎と
聞からに小川渡れは二川の宿打過て火打坂/不尽山(フ シ サン)を右に
見て行は心も吉田の宿爰に伊勢大/湊(ミナト)へゆく舟有て道者
共皆乗たり我にも伊勢か望みならはのれと云是社よ
き便船よすこし足を休めんと思ひ頓てのらんとしたりしか
まてしはし頃は霜月下旬/日和(ヒヨリ)を待て遅くやならん其上
道中も見物すへしと思ひ返していや我はのるましといふより
早く行程に石田/二堺(ニ サカヒ)見かひのこう越かと人か赤坂や爰社東
海道一番のよき宿にて/留(トム)る女も浄土寺ひし川宿はそう
たの/郷(ガウ)太平川を打渡りゆけは向ひは岡崎の日本一の大橋
を二百九間とかそへたりむかし語の言の葉を思ひかへせは