翻刻
/己等(ヲノレラ)何とて橋を渡さぬそゆふへの/遺恨(イコン)はらさんとや
それは我/言(イフ)たり某一人船に残りをのれら一々獄門産に
さらへ落すそ己等橋を渡さぬかといふ程こそあれとも板に
飛渡り三尋計の足場の板を其まゝ引/起(ヲコ)して軽々と
振廻し石垣へ渡しかけ皆上られよといふて板はなをふまへて立
たり貴賤の乗人老若男女百姓商人細工の者道具荷ひ籠
なと/背負(セヲヒ)て尻目つかひをして逃たり其中にも刀さしたる
者共二十人計あかるや否や身こしらへをする皆上り果てのち
ばら者かいひけるは/己原(ヲノレハラ)も皆上りをれ陸にてつかみ殺す
そ船頭等かいふやうやれ髭よ其方か眼にはおぢぬそや此舟の
船頭なれは汝如きの者に逢事日々なれ共終に一度も/不
覚(フカク)を不取いさこひといふて/木刀(ホクトウ)を手に〳〵追取小おとりして
上る梶取一人舟をかたつけ居るはら者見てをのれは何
とてあからぬそ一人も船にはおかしとかいなをつかみねぢ上れは
上りますといふて是も上りけり大男も上り状箱をは着たる
羽織に/包(ツヽ)み石垣の上になけ上大はだぬき刀の柄に手をかけ
鰐口ほとの口を広け我は安芸の/大掾(タイセウ)?か時付の飛脚
やいはれさる詮儀仕出て余程時をとるをのれらか