翻刻
きらねは申/訳(ワケ)はなしと怒る彼残りし者共もばら者/仕負(シマケ)
ば遁さしと刀をくつつけ待かくる流石船頭等もはら者かく
と名乗程の者にも少もおそるゝ気色もなくきやつか/抜(ヌキ)
とらはたゝき落せとさしがひなとをふり廻し互に珍事
に及ふに面の番所より/突棒(ツクホウ)さすまたを以て二三人走り来て
是は狼籍や先御飛脚衆堪忍あれ惣して宮の渡し舟め
是に不限度々の事なれは必桑名へよせましと怒り頓て
船人追返す当座の口論なれは互にいかりをしつめ我々も町へ出
支度をして又打つれてそ上りける/危(アヤウ)き桑名を立出てやかた
町へ出大福の村打過てやなか村/往来(ユキヽ)の人もあふ気の里あさけかき
里松寺もとみたの宿と聞程に暫く立て見とち川四日市こそ
/末(スヱ)川の土橋こえて見渡をは浜田の宿のあかつかを行かふ駒も
追分の爰にて彼はら者に暇乞して我独伊勢海道へそかゝ
りける/白粉(シフコ)の町に来てみれは/冨(トミ)たる家の有様か語るに言葉も
/有磯海(アリソ ウミ)にかけ並へたる舟共は/日和(ニハ)を松寺/臥拝(フシヲカ)みされは丹後に聞え
たる由良の湊のさんしやうが召仕ふたるこはき社継母の/讒(サン)により竹
のふしきにこらを出しそや昔語りも跡みれは猶も思ひはうき田川/閑部(カンベ)
の宿に秋の田のかりほの庵の苫屋こそ/畔(アゼ)に残りて有間の里あのゝ