翻刻
松原打過て津の観音是とかや雲津河原に鳴千鳥波の立
居を松坂や上りてゆけは今ははや跡の同者も皆爰へからか
坂をも打過てあれにみゆるは野の宮の森の梢もうら枯て
なる木の枝の/梟(フクロウ)がきやうとけに鳴暁の明星か茶屋を打過て
/小幡(ヲバタ)の川をわたらひの山田の町にそ着にける先神前に参り
手水をつかひ刀をぬぎかうへを地につけ合掌して敬白す再拝
抑今度江戸に於て天照皇太神の御恵みに依て大切なる/分(ワケ)を
明白に埒明事偏に太神宮の/擁護(ヲウコ)によるか故也向後も/愚心(グシン)
迷ひの雲晴万事に丹心を得せしめ給ひ/足事(タルコト)をしらしめ給へと
かしこみ申すと心静に祈念をこらし扨四十末社を廻り夫より
高野のこんぜん/月読日読(ツキヨミ日 ヨミ)鏡の社高間か原へ行岩戸を拝み
茶屋に休て東を見るに大湊尾張の/海面(ウミツラ)沼うつ見二見/阿濃(アコキ)
か浦まてみえたりけふも日は西の山の端に落内宮は明日にそ拝まん
とそれより我御師の松木殿に行けれは神主出合給ひ是は〳〵
珎しや/御分(ゴブン)の公事の沙汰大聖寺の道者語て委しく聞たり
扨只今は江戸よりか亦国よりの参宮かいや江戸すくにと申す扨〳〵
手柄哉我も此事聞よりも神前の祈念忘るゝにあらす/寒苦(カンク)
の長旅嘸あらん先々風呂たかせ料理を出せなといひつけられ