翻刻
の木影に五人十人ツヽ集りて振ひ居る也焼たる方をみれは
御厩より小田の橋まて二十余町の間宮殿楼閣玉を磨
しも神主の家を始め数千軒の家とも寛文八年戌の
霜月廿八日の只一時のうちに/灰燼(クハイジン)となる浅ましといふも余り
あり/呼(アヽ)今年いかなる年なれはかゝる/尊(タツト)き宮中の此火災に
逢事不思議なり吾も又いかなるとしそやこゝかしこにて肝を
/消(ケ)し胸を冷す行末とても何事かあらんと安き心もせさりける
それより田中を/筋違(スチカイ)に/間(アイ)の山に出支度し宇治川の漲る流れ
に身を清め内宮に参詣し八十末社を拝み廻り夫より五十鈴川を
渡り風の宮にてあら笑止やゆふへ社如何にすくれて大風なり内外
の誓に/隔(ヘタ)てはあらしと思ふにつけておかしき狂歌「世の中を
閑にめくめ吹とてもなと此神のはからひの風また雨の宮にて
「雨の宮とゆふへの空にかひもなしまたぬきのふの焼はふるそれより
下向して小田の橋へ至しに中〳〵町筋は焼/落(ヲチ)し/虹梁(コウレウ)ともの
道中に横たはり今を盛と焼るほとに又田の中をつたひ山を
廻りなとして頓て河原に出渡りをも越て北に向ひて行ほとに
近辺の見廻人共或は馬/駕(カコ)/歩行(カチ)はたしにて山田へ行事多々
櫛の歯をひくか如し我をみてなふ山田よりも来る人か火事は