翻刻
ゞつ迄行と長浜の橋の上より見渡せは面にみゆるは天台山谷々
まても雪ふりて/四明(シメイ)が嶽も/無動寺(ムトウシ)も平谷横川の峯迄
も皆白髭と成にけり扨又北に竹生島あらち/海津(カイツ)の山迄
も皆白妙となかめこし深き思ひは姉川の瀬々の岩波
まうたり川今行末は木の本のよごの入海見渡せは/海漫々(カイマン〳〵)た
る海面にいつくの程かやなかせの津ばひ峠に打上り猶行末を詠む
れは雪高山にふりつみて/邂逅(タマサカ)にある/道(ミチ)たにも谷のあらしに吹
埋て前後を更にわけ兼たりいとゝ/懶(モノウ)き其中の河内の宿
は埋もれて人家も見えぬ有様も頓て春にはあふみ路を
今そ越路の境なる杓子峠の茶にめてゝいかに亭主是は又
事々しき大雪そ茶屋かいひけるはされは社此近年になき
深雪にて此間四五日上下留りたり是より板取迄は猶々大雪也
無案内にては中〳〵ならし今少待給へ湯の尾の者か/鬮(クジ)にさゝ
れて中の河内へ行たり今に来るへし彼とつれてこへられと
いふ所へ出口といふ/四十年(ヨソジ)の比の男/橇(カンシキ)かけ汗水に成て帰りたり
茶屋かいふやうなふ/出口(テクチ)此人板取迄道しるへあれや彼者か/云様(イフヤウ)
酒買てたひ候へといふ安き事とて酒かへは二三盃のみて今はちから
付たりいつく迄も御供申すと茶屋を出てけはしき坂を下る