翻刻
に道更になし橇の跡に付て二時計に辛苦して板取に着
日暮けれは彼者と二人泊りたり水風呂に入あら嬉しや今こそ
我国へちかし一両日には親一門に逢てうき事共を語らんと思へは
夜もいねられす翌日/夙(ツト)に起出て又彼出口と物語して行に
瓜生の館の杣山は雪の下にも火打か城急けは程も今庄の
宿湯尾峠を打越えてさば波よする河の流れの末に見や
れは脇本也爰よりひなか嶽を見上れは峯より麓まて雪
に埋もれて常よりは見事也「都にもかかる気色はよもあらし
姿をかゆるひなの山かな夫より一本杉今宿越えて府中なる人のこころは
白鬼女の渡りを過てさはやの宿水落渡る鳥羽の町川も/浅水(アサウス)
宿過て江端の里に咲梅の皆はなんどゝみるからに山崎こえて/木田(キタ)
の町神宮寺をも伏拝み/黒龍(クヅレ)の宮をけふ廻て足羽の宮を詠め
やり音に聞えし大橋を/轟(トヾロ)〳〵とうち渡り福居の庄に入ぬれは
先魚町へ尋行もし我か宿の便あらは聞はやと思ひ常々の宿入る
吉崎の魚商人三四人居合扨々珎しや只今来り給ふかといふ
我も嬉しさ限りなく/王質(ワウシツ)か山より出て七世の孫にあひしもか様
にこそ思ひけむ宿には何事なきや別義なし先々装束なをし休み
給へといふ程に其まゝ足洗ひなとして扨弟共か乗し船の事を