翻刻
す尚寧は西来院菊隠江洲親方等を顧みて謂て
曰吾聞く積善の家には余慶あり積不善の家に
は余殃ありと今余慶既に尽き余殃孤か身に及
ふ父母の国を去り遠く扶桑に赴かんとす一樹
の影に舎り一河の流を汲むも亦他生の縁とは
いへ己に彼しこに至らは孤身復た誰にか托せ
んと従臣等皆是を聞き涙に伏して対へて曰臣
等世々爵禄を辱ふし父母を養ひ妻子を育す皆
是れ君恩に非らすや禽獣すら尚ほ恩を知る況
んや人に於てをや願くは王駕に従ひ臣子の分
を尽し世々の洪恩に報ひ奉んと尚寧始て心安
くそ船に乗る友野二郎右衛門三島九郎左衛門
等本船を守護し今帰仁大島を経て廿四日薩摩
山川港にそ着きにける廿五日上陸し山川の仮
屋に留まる久高は人を残して警護せしめ即日
鹿児島に凱旋す廿六日家久使者を発し捷を駿
河及江戸に報す六月三日藩命あり町田久幸《割書:勝|兵》
《割書:衛|》鎌田正徳《割書:左京|亮》等山川に至り尚寧等を守護す
義久正興寺の僧丈之を遣し尚寧を慰労す廿三
日尚寧等を舟に上せ鹿児島に至る時に新殿既