翻刻!江戸の医療と養生

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日ごとの心得 - 翻刻

日ごとの心得 - ページ 15

ページ: 15

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【右丁】 づけて施薬(せやく)せりさはあれ其頃は山坂野原にかゝりて水なき節または 息切(いききれ)などの危急(ききう)を救ふを専とせり空腹(くうふく)の飢(うゑ)をしのぐの経験(けいけん)は天明 年中の飢饉(きゝん)のせつに人を救ひしこと百を以てかぞふときけり○因にいふ 朝鮮人参の種を日本へ植はじめしは余が友 阿部櫟斎(    れきさい)の先祖将翁とい へる人延享元年九月朝鮮人参のみ百五十五粒を 官(くわん)より給はり神田 紺屋町の御預り地へうゑつけ其後諸国へうゑ弘めたりされば延享より前 吾邦朝鮮種の人参あることなし延享元年は天保四年をさること九十 年の昔也○延命丸効能第一此薬は遠路をするとき懐中し山坂に かゝりて息切れしまたは人里とほき野原にて咽(のと)かはき湯水ほしき せつ此薬を一ッ口中に含(ふく)みて歩行するときは自口中に津液(しんえき)を生し て湯水をもとむるのうれひなし薬はうるほひたるときにのみくだすべし ○人家なき路にて空腹(くうふく)にたへかねたるときは二粒ほどのむべししば 【左丁】 らくは空腹【「スキハラ」左ルビ】のなんをしのぐ○留飲(りういん).食積(しよくしやく).心下痞満.の人日に二粒づゝ用ふる時 はおのづから病根ゆるまる○虫症にて黄水を吐し又は腹痛を発するを 治○噯気(あいき)【「ムカ〳〵」左ルビ】呑酸(どんさん)【「オクビ」左ルビ】嘈囃(さうざつ)【「ムネヤケル」左ルビ】によし○虚弱の人 遺精(いせい)する○熱病後食すゝ まざる○小便不通を患る○大便微利する○面うそばれ手足むくむ ○常に口中潤ひなくかはく○産後脱血してめまひする○虚弱の感【「カゼ」左ルビ】 冒【「ヒキ」左ルビ】熱発しかねる○ 痳病年をへていえず痛甚しき○寒気にあたり 大腹痛する○金瘡発熱する○霍乱吐下の後腹内微痛する○右あ ぐるところの諸症に三【一二ヵ】粒づゝさゆにて用ふべし速に治する症まゝあるべし さはあれこれらの病ひは此薬の外にも治する薬方いくらもあるへければ 今さら爰(こゝ)にいだすにおよばねど只此方の奇なることは飢(うゑ)をたすくるの手 当になることたび〳〵経験する処なれば万一 米穀(べいこく)高直にて飢饉(ききん)の憂(うれひ)も あらんときは速に此薬を製方(せいほう)して貯(たくは)へおき食のたすけとなし